特集記事 「ハートのバリアフリー」に挑む

株式会社オーリアル代表取締役
大塚 訓平(おおつか くんぺい)さん

1980年、宇都宮市生まれ。拓殖大学卒業。東京で大手分譲マンションデベロッパー会社に勤務後、2006年に独立して宇都宮市上戸祭町で不動産業を始める。07年にはうつのみや花火大会を復活させた行動力の持ち主。09年、脊髄損傷の重傷を負った。

大塚訓平さん

 「車いす社長」として知られる大塚さん。障がい者、健常者ともに住みやすい家づくりを手がけながら、街のバリアフリー化にも取り組んでいます。大塚さんにこれまでの活動や今後目指すところなどを聞きました。

現在までの事業活動などを教えてください。

 東京で3年間、分譲マンションのデベロッパー会社に勤め、平成18年に宇都宮に戻って、個人事業として不動産業のオーリアルを立ち上げました。事業向けの不動産を中心に手がけ、平成20年に法人化しましたが、その1年後、事故に遭って脊髄を損傷し、車いすの生活を余儀なくされました。この出来事で事業の内容も私の考え方も大きく変わりました。

バリアフリー住宅「ミタス」を提案されていますね。

 従来のバリアフリー住宅は、「バリアフリー対応商品」を使って施工していました。しかし、それだと一緒に住む家族には使いにくいという事態にもなりかねません。「ミタス」は「みんなが、楽しい、すまい」の頭文字です。「足す」ということで、プラス指向の住宅という意味もあります。家族、来客まで考えた住まいです。さらに、バリアフリー対応型の商品は、量産されておらず、単価が高くなりがちです。健常者用の商品に一工夫加えることで、飛躍的に使いやすくなることもあります。こうした視点は、私自身が障がい者だからこそ出てきたものです。

実際の施工にあたって注意する点はありますか。
株式会社オーリアル社屋

 まず綿密なヒアリングをさせていただいています。バリアフリーは単に平らにすればいいというものではありません。生活の中で、少しがんばるところと楽をするところを見極め、あえてバリアを残しておくことが有効な場合もあります。例えば、バリアフリー法でいうスロープは、勾配が12メートルで1メートル上がる「12分の1」ですが、私どものモデルルームでは「10分の1」と少しきつくなっています。腕の筋力の衰えを防ぐためです。障がいは人それぞれです。その人に本当に何が必要なのかを、とことん本人やご家族と話し合ってご提案するようにしています。これも私だからこそできることだと思っています。

バリアフリーの街づくりにも力を入れていますね。

 ハード面のバリアフリーはもちろんなのですが、「ハートのバリアフリー」を進めたいと考えています。万人にあてはまる究極のユニバーサルデザインは、現実的にはなかなか難しいと思います。であれば、段差があれば近くの人に車いすを抱えてもらえばいい。健常者は思いやりの心、障がい者は手助けに対する感謝の心を持って、お互いが住んでいて心地よい街にする環境づくりを目指しています。そのためには子どもたちへの教育も必要だし、障がい者もコミュニケーションの力を身につけなければなりません。現在、NPO法人を立ち上げる準備をしています。「障がい者を納税者に」が最終的な目標です。父に言われた「命があれば、あとはかすり傷」という一言が、大きな心の支えになっています。


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