福祉講座(九)障がい者福祉 街づくりと雇用

「心のバリア」を乗り越える

さまざまな機会に障がい者の社会進出の必要性が叫ばれています。
少しずつ改善の傾向も見られますが、実態はまだまだです。
障がい者も高齢者も健常者もすべての人々が
安心して暮らせる街にするにはどうしたらいいのでしょうか。

街のバリアフリーはどうあるべきか。
障がい者用の駐車スペースは珍しくなくなりました

 街の中を歩いていると公共施設には必ずスロープがあり、障がい者用の駐車スペースが設けられています。このところ特に急速にバリアフリー化が進んできたようにも見えます。現在、どのような状況にあるのでしょうか。また、今後どのように進められていくべきなのでしょうか。
 平成18年、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」、いわゆるバリアフリー法が施行されました。高齢者や障がい者などあらゆる人たちが社会活動に参加し、自己実現できるようにと、以前からも建物や交通機関などでバリアフリー化が進められてきましたが、連続的なバリアフリー化が図られていないことや、ソフト面での対策が不十分などといった課題がありました。
 このため、それまでのハートビル法と交通バリアフリー法を統合・拡充して、このバリアフリー法が策定されました。従来から対象となっていた建築物、公共交通機関、道路に加え、路外駐車場、都市公園にもバリアフリー化基準(移動等円滑化基準)への適合が求められています。また、駅を中心にした地区や、高齢者、障害者などが利用する施設が集中する地区では面的なバリアフリー化が推進されることになっています。さらに住民のソフト面での施策の充実も図られます。
 この法律では国が定める基本方針に基づき、市町村が基本構想を策定することになっています。さらに、この基本構想を作成する際には、高齢者や障がい者などの当事者の参加を図るための協議会制度を法律に位置づけました。また、当事者から基本構想の作成や見直しを提案できる制度もつくられています。
 具体的なバリアフリーの施策についても、高齢者、障がい者など当事者の参加の下で検証し、その結果をさらに新たな施策や措置に盛り込みながら、段階的・継続的な発展を図っていくことを国や地方自治体の責務と位置づけています(スパイラルアップ)。高齢者、障がい者など当事者の意見を十分に反映させ、事業や施策の評価結果を積み上げていくことが規定されたわけです。

 当たり前のようなことですが、逆に言えばそれまでのバリアフリーの施策に当事者の意見があまり反映されてこなかったといえるのかもしれません。脊髄損傷によって車いすの生活となった会社社長大塚訓平さんは「これまで〝取りあえずバリアフリー〟が多かったと思います。地域の実情に合わせ、ユーザーの目線が必要ですが、そういった発言ができる人がなかなかいなかったような気がします。NPO法人を立ち上げそれらに対応できないかと模索中です」と話します。
 さらに、バリアフリー法では「心のバリアフリー」の促進をうたっています。構造物をバリアフリーにすればすべてが解決するわけではありません。また既存のものでも、ちょっとした手助けでバリアが問題にならなくなる場合もあります。バリアフリー化の促進に関して国民の理解・協力を求め、国や地方自治体、さらに「国民の責務」とした点が同法の特徴です。

手すりが右についているオリオンスクエアのトイレ


左についている下野新聞ニュースカフェのトイレ
障がい者が生き生きと働くための条件整備

 障がい者が自立した生活を送っていくためには、バリアフリーなどの住環境の整備とともに、雇用を確保することが何よりも重要です。障害者雇用促進法では事業主に対して、常時雇用する従業員の一定割合以上の障がい者を
雇うことを義務付けています。これを法定雇用率といい、民間企業の場合は1.8%以上となっています。
 厚生労働省栃木労働局が発表した「平成24年障害者雇用状況の集計結果(平成24年6月1日現在)」によると、栃木県内で雇用されている障がい者数は、民間企業(56人以上規模の企業、法定雇用率1.8%)では、2880.5人で過去最高を更新しました。前年比3.6%、99・5人の増加となっています。身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者のいずれも増加しましたが、この中でも特に精神障がい者が115人(36・9%増)と、大きく増加しました。
 数字だけを見ると、かなり改善が進んでいるように見えますが、実雇用率は1.59%で、前年の1・58%から少し増えたものの、法で定めた1.8%にはまだまだ遠いものがあります。法定雇用率を達成した企業の割合は49.5%でした。
 実はこの法定雇用率は平成25年4月から、民間企業の場合、2%へと引き上げられることになっています。また、障がい者を雇用しなければならない事業主の範囲も、これまでの従業員56人以上から50人以上に変わります。障害者雇用率制度に基づく雇用義務を履行しない事業主は、法律に基づいた雇い入れ計画作成命令などの行政指導を受けるとともに、改善が見られない場合、企業名が公表されます。
 さらに、法定雇用率を下回った従業員200人を超す事業所は、法定雇用障がい者数に不足する人数に応じて納付金を納めなければなりません。この納付金を財源に法定雇用率を上回っている事業主に対して、障害者雇用調整金、報奨金、各種の助成金を支給します。
 こうしたことから、今後、障がい者の雇用に積極的に取り組んでいこうと考える企業が増えることが予想されます。しかし、一方で障がい者を受け入れるためにはどのような社内整備が必要なのか、どのような職種に向いているのか、判断に迷う企業も出てくる思われます。企業側と入社した障がい者の認識の違いから、早々と離職至るケースも少なくありません。
 障がい者の就労支援に取り組むNPO法人チャレンジド・コミュニティの金井光一理事長は、この法定雇用率の引き上げをきっかけに、双方をマッチングさせる取り組みを進めています。
自らも障がい者である金井さんは「受け入れ企業を開拓する営業活動を進め、そこに職業訓練を積んだ障がい者を雇用してもらうよう働きかけます。受け入れの条件整備などに戸惑っている企業があれば、それらについてもアドバイスしていきたいと思います」と話しています。

栃木県内の民間企業で雇用されている障がい者の数の推移


栃木県内の民間企業での実雇用率の推移

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