特集記事 障がい者と企業の橋渡し役に

NPO法人チャレンジド・コミュニティ理事長
金井 光一(かない こういち)さん

1953年、札幌市生まれ。株式会社TKCでシステム開発に長年携わる。脱サラして2006年5月にパンの製造販売会社である有限会社「コパン」を、さらに、翌年3月にNPO法人チャレンジド・コミュニティを立ち上げ、現在、同法人の理事長を務める。

金井光一さん

 おいしいパンを届けながら、一方で障がい者の職業訓練に取り組む金井さん。20人に1人は障がい者という現実のもと、働く意欲のある障がい者と企業との橋渡し役として、その役割は重要さを増しています。

現在までの活動内容をお聞かせください。

 長期間にわたってIT関連の仕事をしていた会社を平成17年3月末に退社して、パンを製造販売する有限会社「コパン」を創業したのが平成18年5月です。翌年の3月にNPO法人「チャレンジド・コミュニティ」を立ち上げました。昔に比べれば、医療、教育、福祉行政など、障がい者を取り巻く環境はかなり改善されてきたとは思います。しかし、残念ながら成人した後の居場所や仕事の状況はあまり変わっていません。そこで、私の仕事の経験が生かせそうだったことや、同じようなことを考えている仲間もいたので、思い切って自分たちでできることから改善に取り組もうと考えたのです。

ご苦労も多かったのではないですか。

 全く新しいことを始めたわけですから、資金集め、障がい者と一緒に働くことへの理解があるスタッフを集めるなど、大変な作業でした。私自身、仕事だけの毎日でしたから、障がい者でありながら行政の取り組みや他の団体の状況なども分からず、当初は情報収集やネットワークづくりに時間を費やしました。転機になったのは平成17年に施行された障害者自立支援法です。同法の枠内でできるサービスはそれを活用し、枠外は自主事業で取り組むという形ができ上がりました。

具体的な事業の内容をご紹介ください。

コパンの店内

 障がい者の相談事業、就労継続支援事業、就労移行支援事業などを、自立支援法に基づき、県の認可を受けて行っています。また、チャレンジド・コミュニティとしてITセンターを運営しています。同センターは就労継続支援A型事業所で、10名の社員がHPの作成などを請け負っています。自主事業はパソコン教室や絵画造形教室、コパンカフェ「デコボコ」、とちぎ福祉プラザ内のカフェ「コッコローネ」のほか、協働会社としての「コパン」があります。パンの製造販売なら発注会社の事情で左右されずに、成果が得られると考えたからです。コパンでは現在、15人のうち7人が障がい者で、できる仕事をシェアしながら働いています。

今後、どのような取り組みを進めていくお考えですか。

 先ごろ、「チャレンジド・ジョブトレーニングセンター」を開設しました。障がい者の雇用を考えている企業と、ジョブトレーニングを積んだ障がい者とをマッチングさせる業務です。私どものスタッフが、雇用を希望する企業を開拓し、外注の可能な仕事を一時的に受注して訓練生に取り組ませ、対応可能なら雇用してもらう仕組みもつくります。平成25年4月から障がい者の法定雇用率が、現行1.8%から2%へと引き上げられますので、雇ってみようと考える企業は必ず出てくるはずです。企業、障がい者双方の要望が実現するように努めたいと思います。


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