福祉講座(二)健康を保つ

介護に頼らない心身の健康を

介護は本人はもちろん家族にとっても負担が大きいもの。
まずは心身ともに健康に過ごすことが肝心です。
元気な毎日を送るためにはどうすればいいでしょうか。
そのヒントを探ってみました。

《身体をつくる》
バランスの良い食生活で自分の健康は自分で守る。

 何にチャレンジするにしても基本になるのは、身体の健康です。栃木県は脳卒中多発県といわれ、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害で死亡する人が常に全国でワーストの上位を占めています。この最大の原因とされるのは塩分の摂取。減少傾向にあるとはいえ、栃木県民の塩分摂取量は、全国平均に比べるとまだまだ多い傾向がみられます。また県内の肥満者の割合が、男性では大半の世代で30%を超え、これもこうした疾患の引き金になっています。
 医療費の増大は国家財政を圧迫する事態を招いています。特に65歳以上の人たちの医療費は、全体の6割近くを占め、高齢者の健康保持は解決しなければならない緊急の課題です。疾病の多くは、生活習慣を見直すことで大きく改善されることは、さまざまな調査から明らかです。
 「自分の健康は自分で守る」ことが健康を保つ上での大原則。積極的に運動をする、栄養管理を心がける、健康診断をきちんと受診する、ストレスを解消し生きがいをつくるなど工夫で、なるべく介護という事態にならないよう努力しましょう。
 中でも食事、栄養の管理は大切です。食べ過ぎないことは重要ですが、高齢者は食が細くなったり、食事作りがおっくうになったりして、品数や量が減りがちです。うっかりすると低栄養状態に陥ってしまうことにもなりかねません。「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」を1日のうちにバランスよく食べることを心がけ、不足する傾向がみられる場合は、健康補助食品などで補うことも必要かもしれません。また、食が進まないような場合には、味付けを工夫したり、季節を感じる食材を美しく盛り付けたりして見た目にもこだわってみると、気分が変わって食べやすくなるものです。時には外食をしたり、友人と楽しく食事をするなど、いつもと違う雰囲気で食べるのもお薦めです。

農林水産省ホームページ『食事バランスガイド』より


《知識をつくる》
シルバー大学校で学ぶことの大切さを実感。
シルバー大学校の一般科目授業風景

 定年退職を迎えたり子育てが一段落して、仕事や家庭内の切り盛りに忙しかった毎日から解放された時、何をすればいいのか戸惑ってしまった、という話をよく聞きます。そのまま家に引きこもってしまったのでは、一挙に老けこんでしまい、社会との関係も断たれてしまいます。
 こうしたことを防ごうと、栃木県シルバー大学校は、各種のカリキュラムを用意し、意欲のあるシルバー世代に学習の場を提供しています。在学中にはそれまでとは違った仲間づくりもで
き、人間関係が大きく広がります。
 栃木県シルバー大学校は、県内に中央校(宇都宮市)、南校(栃木市)、北校(矢板市)の3校があります。それぞれの学校でカリキュラムは同一。通学区域による学区の定めはなく、どの地域からどの学校に通ってもいいことになっています。ただ、定員に違いがあり、南と北はそれぞれ120人。中央校には2コースがあり、各160人ずつ合計320人となっています。
 入学月は10月。新年度入学と思って油断していると、既に募集期間が終わっていることもあるので注意が必要です。学習年限は2年間。1年次は地域活動に必要な基礎的な学習を行うことになっています。全員で受講する「一般科目」のほか、スポーツ・レクリエーション、健康づくり、福祉、ふるさとふれあいの4つの専門科目があり全員が全コースを履修します。パソコンの初歩も学びます。

原色の衣装に身を包み、元気いっぱいにダンスを披露

 2年次は応用課程で、全員が学ぶ一般科目のほか、4つの専門科目(スポーツ・レクリエーション学科、健康づくり学科、福祉学科、ふるさとふれあい学科)の中から1学科を選択して実技や実習を交えた学習を行います。
1年次に比べさらに専門性を高めた高度な内容になっています。また、授業以外にクラブ活動が盛んで、絵画、書道、民謡、アフリカンダンス、太極拳など、文化系からスポーツ系まで活発に活動しています。
 数年前には学習体系が大幅に改編されました。趣味的な内容が色濃かったものから、地域活動の推進者養成を狙ったカリキュラムに組み換え、授業内容も専門性が高まりました。卒業生の中には自治会などの地域団体で役員
を務めるなどリーダーとして活躍している人も数多くおり、また、卒業生同士が連携して各種プロジェクトに取り組むなど成果が上がっています。
 授業料は年額1万8000円。そのほか資料代として年額2000円。原則的には県内在住者で60歳以上の人が対象となっています。入学の必要書類には現役時代の職を記入する欄はあえて設けてありません。学ぶ立場は皆同じ。初心に返って新たな関係を築いていこうという趣旨からなのです。問い合わせは栃木県シルバー大学校☎028・650・3366(事務局・とちぎ健康福祉協会事業部)へ。

《笑顔をつくる》
心も体も開放して楽しむアフリカンダンス。
蛸蔦義春さん

 ホールいっぱいに、軽快な太鼓のリズムと歌声が響きわたります。それに合わせて手を振り、体をくねらせ、足を踏みしめて、参加者全体が大きなうねりになっていきます。自然に体が動き出し、みんなに笑顔があふれます。「アフリカンダンス」の練習風景です。ステージに立つ時には、顔にペインティングし、カラフルな衣装も身にまとうそうです。
 鹿沼市在住の蛸嶌義春さん(63)は「アフリカンダンスクラブOB会」の会長を務めています。会の構成メンバーは栃木県シルバー大学校中央校アフリカンダンスクラブのOBが中心。
 「学校のクラブ活動を選ぶ時に、長かった会社員生活から抜け出すためには、インパクトが強いものがいいかなと思って始めました。人前で踊った経験などなかったので、最初は戸惑いましたが、やってみたら最高に楽しいんですよ」と笑顔が弾けます。
 指導するのは宇都宮市内でフィットネスインストラクターを務める石川典子さん。「原始的でシンプルで温かいアフリカのリズムは生命力そのもの。ストレス社会の中で疲れている時こそ、このダンスで心と体を開放してほしい。また、無理なく筋力が鍛えられますし、肩こり解消にももってこい。きっと新しい自分が発見できますよ」と勧めます。アフリカの伝統的な舞踊を石川さんがアレンジして、エアロビクスの要素も取り入れました。
 毎月、各地の老人施設や学校などを訪問してダンスを披露し、ともに踊る活動を続けています。「この音楽は高齢者には特に向いていると思います。施設に伺った際には、スタッフにも車いすの人たちにも一緒にやってもらうようにしていますが、最初はしり込みしていた人も、職員が踊っているのを見ると自然に体が動いてくるようですね」と蛸嶌さん。上手・下手は言わない、間違っても気にしない。必要なのは笑顔だけ。ぜひ一緒に楽しみましょう、と呼びかけています。

《生きがいをつくる》
ひたすら耳を傾け生きる極意を先輩から学ぶ。

 健康な体と同時に健康な心を維持していくことも重要です。そのためには積極的に社会参加していくこと、言葉を換えれば、いかに生きがいをつくるかがポイントになります。その代表的な例はボランティア活動ではないでし
ょうか。山口正子さん(71)は、5年ほど前から「傾聴ボランティア」に取り組み、「SDOサポート27」というグループの会長を務めています。
 傾聴ボランティアは、老人施設や個人宅に出向いて、高齢者の話にひたすら耳を傾けるボランティア活動です。特別な資格はいりませんが、アドバイスをしない、相手の言うことを否定しないなどの原則を守り、話し手の言うことを心を込めて聴くことができなければなりません。場合によっては、人生の重みをともに受け止める覚悟も必要になってきます。
 「最初はどうしても『何しに来た』という感じになりがち。まずは信頼関係を築くことが大切です。時間がかかっても心を開いてくれて、傾聴ができた時は本当にやりがいを感じますね。そのうち心待ちにしてくれる人たちも出てきて、ますます辞められなくなります」と山口さん。傾聴を始めた人はめったに辞めないといいます。お年寄りの支えになれる喜びが、自分の生きがいにつながっていくからです。
 山口さんは幼いころに父を亡くし、明治生まれの母親と一緒に暮らしている中で、昔の話を聴くことが大好きだったそうです。「とても面白くて飽きることがありませんでした。これが今の私の基礎になっていると思います。
人生の大先輩の方々の話は、私たち自身が得るものが大きいんですよ」。ほんの4、5年前までは、ほとんど知られていなかった傾聴も、徐々に仲間が増えていると言います。県内外の団体同士の交流も活発になってきました。
「ぜひ一緒に活動しましょう」と山口さんは話しています。

ひたすら耳を傾ける傾聴ボランティアのようす


山口正子さん


茨城県下妻市でのグループ交流

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