福祉講座(七)地域で高齢者を支える

地域ぐるみで高齢者を守る

高齢者夫婦だけの世帯や独り暮らしのお年寄りが増えています。
中でも認知症への対応は緊急を要するものがあります。
いずれ誰もが迎える可能性がある状況。
高齢者を支えるには地域の力が必要です。

自治会あげて取り組む高齢者の身守り活動。
出前講座「ストレッチ体操」

 富士見が丘自治会は1300戸を抱える宇都宮市内で2番目に大きい自治会です。団地が造成されてから40年以上が経過し、住民の高齢化が急速に進んできました。自治会内の高齢者の状況を調査したところでは、平成24年4月現在で75歳以上の高齢者は510人余り。このうち独り暮らしが80人余りを占め、その約半数は災害の時に単独での避難が困難とみられる「災害時要援護者」となっています。
 こうした状況のもと、地域住民自らの手で高齢者が住み続けられる生活基盤をつくろうと、数年前、自治会の中に「シニア支援部」を発足させました。
これまで宇都宮市や地域包括支援センターと連携して、さまざまな事業を行ってきました。介護認定を受けると施設などの利用がしやすくなりますが最近はむしろ健康な高齢者が交流する場が少なくなってきました。引きこもりにならないよう、その居場所づくりを目指しています。

自治会の茶話会

 まずは元気な生活を送ろうということで、自治会館で「出前講座」を開催。運動指導員や保健師などの外部講師に来てもらい、「運動機能を向上させよう」とのテーマで「ストレッチ体操」などを行っています。少しずつ内容を変えながら毎年開催され、平成24年で4回目となりました。毎月第1月曜日には「茶話会」を開いています。みんなで集まってお茶を飲んだり、折り紙などの手作りを楽しみます。仲間づくりの機会をつくると同時に、手先を動かすことで〝脳トレ〟にもなるというわけです。また、この茶話会参加者を対象に日帰り温泉ツアーを企画して好評を得ました。
 さらに、これまでの活動を基礎に24年11月には「ふれあい・いきいきサロン富士見が丘」が発足しました。従来の出前講座や茶話会に加え、自治会館を活動の場としている卓球クラブ、太極拳クラブ、将棋愛好会などにも参加してもらい、受け皿をさらに広げて集まりやすくしました。
 同自治会では、こうしたさまざまな〝場〟の提供以外に、アイデアを凝らしてお年寄りを見守り、安全を確保する活動に取り組んでいます。一つは地図作り。民生委員や、福祉協力員(自治会の役員が兼務)から寄せられる情報を一元的に管理して、どこにどういう状況の高齢者が住んでいるかを住宅地図にプロットして、見回り活動に生かしています。災害時の要支援者もこれによって把握できます。

浅間健さん

 また、75歳以上の高齢者宅に、冷蔵庫のドアに張るマグネット式のシートを配布し、緊急連絡先やかかりつけ医などを記入してもらうようにしました。さらに、救急隊員や警察官が見つけやすいように、各種情報を収めて冷蔵庫の中に入れておけるケースも配りました。個人情報保護の機運が高まり、自治会名簿に緊急連絡先を記入しない住民が増えていることへの対応策でもあります。
 同自治会の浅間健事務局長は「高齢社会は待ったなしの状況です。地域社会でもしっかりと取り組んでいかなければなりません。いきなり理想的な形を求めるのではなく、自分たちでできるところから進めていくことが肝心だと思っています」と話しています。

心の杖となる認知症サポーター。
子ども向けの認知症サポーター養成講座

 今後、間違いなく大きな課題になってくるのが、地域での認知症高齢者の安全確保です。地域社会で認知症の高齢者を適切に見守っていくために、厚生労働省は数年前から「認知症サポーターキャラバン」に取り組んでいます。
「認知症を知り地域をつくるキャンペーン」の一環で、認知症を正しく理解し、本人や家族を温かく見守り、支援する「認知症サポーター」をできるだけたくさんつくっていこうというものです。
 サポーターに期待されることは①認知症に対して正しく理解し、偏見を持たないこと②認知症の人や家族に対して温かい目で見守ること③近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する④地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる⑤まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する―ことです。
 認知症サポーターとなるには「認知症サポーター養成講座」を受講する必要があります。講座では前記のような諸点について、具体的にどう対応すればいいかを学びます。同講座の講師となるのは、研修によって、認知症の基礎知識、サポーター養成講座の展開方法、対象別の企画手法、カリキュラム、協力機関の探し方などを学んだ「キャ ラバンメイト」です。
 当初、100万人が目標だった認知症サポーターは、平成24年6月末で300万人を超え、その輪は大きく広がっています。地域住民はもちろん、金融機関やスーパーマーケットの従業員、小・中・高校生など、さまざまな立場の人たちが参加しています。

認知症サポーター養成講座

 栃木県内でも各市町で養成が行われています。平成21年に養成が始まった小山市の場合、年を追って受講者が増え、平成24年10月現在で2645人が誕生しました。同市では65歳以上の高齢者人口が約3万人いますが、そのうち何らかの認知症の症状がある「日常生活自立度1」に認定された人が約1割を占めます。こうした現状を踏まえ、平成27年度までに、認知症の高齢者1人に対し2人のサポーター、つまり6000人のサポーターを養成する方針です。
 当初の受講者には民生児童委員、市の職員などの専門職が多かったといいますが、次第に地域の自治会、高齢者団体、企業などにも広がってきました。子どもたちの理解も重要なことから、小学生を対象にした講座も組まれてい
ます。運動の拡大によって、講師となるキャラバンメイトの不足が懸念されてきたため、平成24年度には新人を養成し、キャラバンメイト連絡会議も新しい体制で活動を始めました。
 同市高齢生きがい課は「まずはサポーターの存在を知っていただき、心の杖になってほしい。認知症らしい人が困っているような場面に遭遇した時に、どこかにつないでいただければ」と協力を呼びかけています。

悩みを語り合って心の負担を軽くする。
アルツハイマーデー街頭活動

 愛する家族が認知症になった時、どうすればいいか。深刻な問題であると同時に、どんな家庭にでも起こりうる事態です。
公益社団法人「認知症の人と家族の会栃木県支部」の佐藤智子さんは「認知症は本人が一番苦しいことをまず理解してほしい。自分はどうなってしまったのかという不安が、さまざまな行動に結びついていきます。ここで家族が焦って誤った対応をしてしまうと、ますますひどくなる恐れがあります。まずは家族が落ち着くこと。そうすれば本人も落ち着いてきます」とアドバイスします。
 さらに対応の第一歩は〝気づき〟であることを佐藤さんは強調します。認知症は早期発見が何より重要で、適切に治療すれば進行を抑えることができることも多いと言います。まずは家族が変化を察知すること。独り暮らしや高齢者夫婦だけの世帯では、周囲の人たちが、新聞がたまったままになっていないか、家の中が汚れていないかなどに注意を向けてみる。「見た目は普通に見えても、家の中に入ってみると全く片づけられていなかったりすることもあるのです。プライバシーにかかわる面も多いので難しいのですが、いろいろな手段を使って生活の様子を観察する必要があります」。これらは地域での身守りネットをつくっていく上でも重要になってきます。

佐藤智子さん

 介護する家族の場合、「優しくありたい」とは思っても、どうしても疲れてしまい、「この先どうなるのだろう」という思いもぬぐえません。支部では県の委託事業として毎週火・水・木曜日の午後1時30分から同4時まで電話相談を実施しています。本人や家族からのあらゆる相談を受け付け、その悩みに寄り添います。電話番号は028‐627‐1122です。毎月第4水曜日には、午後1時30分から同4時まで、栃木健康の森で定期つどいを開いて、それぞれの状況を語り合い、支え合っています。
 このほか機関誌の発行、専門家を招いての講演会、9月のアルツハイマーデーに合わせての各種活動、「若年性元気サロン」の開催など、各方面にわたる活動を行っています。年に1度は会員の本人、家族、サポートする人々で、那須への1泊旅行にも出かけ、リフレッシュを図っています。「同じ悩みを語り合える仲間がいるだけでも気持ちが楽になるものです。ぜひ会に参加してほしい。また賛助会員の制度もあるので一般の方も会の活動を支えてほしい」と呼びかけています。

「認知症」早期発見のめやす(認知症の人と家族の会パンフレットより)

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